建築基準法 解釈と説明

用語の定義
既存不適格
既存不適格建築物の増築又は改築の取扱い

定 義

 敷地に変更がある場合の増築又は改築が基準時における敷地内におけるものであることが前提。

事例1

敷地内に法第48条第1項から第12項までの規定の適用を受けない建築物(以下「既 存不適格建築物」という。)が一棟ある場合(図1)の増築又は改築については,次によること。(既存不適格建築物の延べ面積は全て適合しない用途に供するものとする。)

(1) 既存不適格建築物A(延べ面積はaとする。)を除却し,A’(延べ面積はa’とする。)に改築又は増築する場合の延べ面積の限度は,a’≦1.2×aとする。

Aの延べ面積=a
増改修後


A'の延べ面積=a'

a=100m2とすると、 a’=120m2まで可能


(2) 既存不適格建築物Aを改築し,A’(a’=aとする。)とすることは可能である。

Aの延べ面積=a
改修後

A'の延べ面積=a'

a=100m2とすると、 a’=100m2の改修は可能


(3) (2)の後においては規模に係わらず,さらにA”を増築することはできないものとする。


A'の延べ面積=a'

A'の延べ面積=a'


×
さらに、A”の増築は不可


   

事例2

同一敷地内に既存不適格建築物が2棟ある場合の増築又は改築については,敷 地単位で判断することとし,次によること。(既存不適格建築物の延べ面積は全て適合しない 用途に供するものとする。)

(1) 2棟の既存不適格建築物A(延べ面積はaとする。)及びB(延べ面積はbとする。)のうち,Bを除却し,B’(延べ面積はb’とする。)に改築又は増築する場合の延べ面積の上限は,a+b’≦1.2×(a+b)とする。


Aの延べ面積=a
Bの延べ面積=b



Aの延べ面積=a
B'は増築部分
上限が,a+b’≦1.2×(a+b)なので、

既存a=80m2 ・ 既存b=100m2 と仮定した場合、
b’=(1.2×(80+100))-80=136m2までの増築が可能

仮に、今回はb’を125m2増築したこととする。


(2) (1)の後にAを除却し,A’(延べ面積はa’とする。)に改築又は増築する場合の延べ面積の限度は,a’≦1.2×aかつa’+b’≦1.2×(a+b)とする。


Aの延べ面積=a  80m2
B'の延べ面積=b' 125m2



a’=91m2まで増築可能
上限が,a’≦1.2×aかつa’+b’≦1.2×(a+b)なので、

既存a=80m2 ・ 既存b=100m2 ・増築b'=125m2 と仮定した場合、
a’=1.2×80=96m2かつ
a’=(1.2×(80+100))-125=91m2までの増築が可能



(3) B’を改築又は増築後,さらにB”を増築する場合の延べ面積の上限は,
a+b’+b”≦1.2×(a+b)とする。


Aの延べ面積=a  80m2
B'の延べ面積=b' 125m2



B”の増築可能面積=11m2
上限が,a+b’+b”≦1.2×(a+b)なので、

既存a=80m2 ・ 既存b=100m2 ・増築b'=125m2 と仮定した場合、
b’=(1.2×(80+100))-80-125=11m2までの増築が可能

今回はb”を10m2増築したことにする。



(4) (3)にAの一部を除却(除却後,残った部分をA1とし,この延べ面積をa1とする。)し,これにA’(延べ面積はa’とする。)を増築する場合の延べ面積の上限は,a1+a’+b’+b”≦1.2×(a+b)とする。


Aの延べ面積=a  80m2
B'の増築面積=b' 125m2
B”の増築面積=b” 10m2


B'の増築面積=b' 125m2
B”の増築面積=b” 10m2
a1部分を20m2残した場合、
a’は最大で、60m2増築可能

今回はa1’を50m2増築したことにする。

上限が,a1+a’+b’+b”≦1.2×(a+b)なので、

既存a=80m2 ・ 既存b=100m2 ・残存面積a1=20m2
増築b'=125m2 ・ 増築b'=11m2と仮定した場合、
a’=(1.2×(80+100))-125-11-20=60m2 までの増築が可能



(5) (4)にA1を除却し,A’にA1’(延べ面積はa1’とする。)を増築する場合の延べ面積 の上限は,a1’≦1.2×aかつa’+a1’+b’+b”≦1.2×(a+b)とする。

A’の延べ面積=a  50m2
A1の延べ面積=a1 20m2
B'の増築面積=b' 125m2
B”の増築面積=b” 10m2


A’の延べ面積=a 50m2
a1’は最大で、30m2増築可能

上限が,a1’≦1.2×aかつ
a’+a1’+b’+b”≦1.2×(a+b)なので、

既存a=80m2 ・ 既存b=100m2 ・増築a’=50m2
増築b'=125m2 ・ 増築b'=11m2と仮定した場合、
a1’=1.2×80=96m2かつ
a1’=(1.2×(80+100))-125-11-50=30m2 までの増築が可能



 事例3
同一敷地内に既存適格建築物が1棟と既存不適格建築物が1棟ある場合(図3)の増築又 は改築については敷地単位で判断することとし,次によること。(既存不適格建築物の延べ面積は全て適合しない用途に供するものとする。)

(1) 既存適格建築物A(延べ面積はaとする。)及び既存不適格建築物B(延べ面積はbとする。)のうち,Bを除却し,B’(延べ面積はb’とする。)に改築又は増築する場合の延べ面積の上 限は,b’≦1.2×bとする。


Aの延べ面積=a
Bの延べ面積=b



Aの延べ面積=a
B'は増築部分
上限が,b’≦1.2×bなので、

既存a=100m2 ・ 既存b=120m2 と仮定した場合、
b’=1.2×120=144m2までの増築が可能

今回は仮にb’を135m2増築したこととする。


(2) (1)にAを除却し,A’(延べ面積はa’とする。)に改築又は増築する場合の延べ面積の上限は,a’+b’≦1.2×(a+b)とする。


Aの延べ面積=a  100m2
B'の延べ面積=b' 135m2




上限が,a’+b’≦1.2×(a+b)なので、

既存a=100m2 ・ 既存b=120m2 ・増築b'=135m2 と仮定した場合、
a’=(1.2×(100+120))-125=139m2までの増築が可能

a’は最大で139m2増築が可能



(3) B’を改築又は増築後,さらにB”を増築する場合の延べ面積の上限は,b’+b”≦1.2×bとする。

Aの延べ面積=a  100m2
B'の延べ面積=b' 135m2




上限が,a+b’+b”≦1.2×(a+b)なので、

既存a=100m2 ・ 既存b=120m2 ・増築b'=135m2 と仮定した場合、
b”=(1.2×(100+120))-100-135=29m2までの増築が可能

今回はb”を20m2増築したことにする。



(4) (3)にAの一部を除却(除却後,残った部分をA1とし,この延べ面積をa1とする。) し,これにA’(延べ面積はa’とする。)を増築する場合の延べ面積の上限は,a1+a’+b’+b”≦1.2×(a+b)とする。


Aの延べ面積=a  100m2
B'の増築面積=b' 120m2
B”の増築面積=b” 20m2


a1を30m2残すこととする。
上限が,a1+a’+b’+b”≦1.2×(a+b)なので、

既存a=100m2 ・ 既存b=120m2 ・残存面積a1=30m2
増築b'=135m2 ・ 増築b'=20m2と仮定した場合、
a’=(1.2×(100+120))-135-20-30=79m2 までの増築が可能

今回はa1’を65m2増築したことにする。



(5) (4)にA1を除却し,A’にA1’(延べ面積をa1’とする。)を増築する場合の延べ面積の上限は,a1’≦1.2×aかつa’+a1’+b’+b”≦1.2×(a+b)とする。

A’の延べ面積=a  65m2
A1の延べ面積=a1 30m2
B'の増築面積=b' 135m2
B”の増築面積=b” 20m2



上限が,a1’≦1.2×aかつ
a’+a1’+b’+b”≦1.2×(a+b)なので、

既存a=100m2 ・ 既存b=120m2 ・増築a’=65m2
増築b'=135m2 ・ 増築b'=20m2と仮定した場合、
a1’=1.2×100=120m2かつ
a1’=(1.2×(100+120))-135-20-65=44m2 までの増築が可能





解 説

増築又は改築を繰り返すことにより,基準時に存在した建築物が消滅した場合においては,法第3条第2項の適用を受ける建築物が存在しないので,その敷地内では,以後,増改築はできないものとする。



このような事例の場合。

参 考

法第3条第2項

不適格事由が2以上の場合の基準時の不適格な部分の床面積の算定(昭26年1月29日 建設 省住指発第418号)

令第137 条の4の床面積の合計等の解釈(昭26年11月7日 建設省住指発第534号)

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