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人体と感電の関係 |
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感電(電撃)の危険度は直接的には主として電流の値,電撃時間,電源の種類および通電経路によって定まるが,間接的には人体抵抗や電圧の大きさが関係する。
苦痛は感じても耐えられる限界の電流値を苦痛電流といい,約7〜8mAである。電流値がさらに大きくなると,直接生命に異常はないが運動の自由が奪われ,長時間たって呼吸困難になり意識喪失,または窒息死することがある。運動の自由を失わない限界電流を可随電流といい約10〜15 mA といわれる。運動不能の限界電流を不随電流といい,それより大きくなると心臓が綿飴して数分内に死亡するといわれ,このような電流を心室拍動電流という。
電撃時間と危険接触電圧(接触電圧とは人体を流れる電流と人体抵抗との積)の関係ならびに電撃時間と危険電流の関係を下記表に示す。。 JISにおいては500 A 容量の交流アーク溶接機の二次側無負荷電圧を95V以下としている。 |
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電撃時間に対する接触危険電圧
電撃時間(秒) |
1.0 |
0.8 |
0.6 |
0.5 |
0.4 |
0.3 |
0.2 |
危険接触電圧(V) |
90 |
100 |
110 |
120 |
140 |
165 |
200 |
※上表は人体抵抗値の最小を500Ωと仮定。手から手,手から足への経路で通電した場合。
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電撃時間に対する危険電流
電撃時間(秒) |
1.0 |
0.8 |
0.6 |
0.5 |
0.4 |
0.3 |
0.2 |
危険電流(mA) |
180 |
200 |
220 |
250 |
280 |
330 |
400 |
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電源としては50 Hz または60 Hz の商用周波数が最も危険で,高周波溶接機は50 Hz または60 Hz 溶接機に比べて安全である。また,直流と交流では直流のほうが安全であり,したがって交流溶接機より直流溶接機のほうが安全である。
人体抵抗は約500〜1 000Ωであるが,人体と電極または大地との接触抵抗は素手および素足の場合は皮膚の抵抗が主体となり,印加電圧,接触面の湿度,接触面積,接触圧力などにより変化する。例えば印加電圧100 V 程度のとき,皮膚が乾燥している場合は普通数万Ωあるが,発汗時は1/12,水に漏れているときは1/25まで低下するといわれる。 |
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感電防止対策 |
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1. |
漏電遮断装置
移動式または可搬式の電動機械器具を使用する場合,または導電性の高い液体に湿潤している所や鉄板,定盤上で電動機器具を使用する場合は,漏電遮断装置を設ける。 |
2. |
アースの取り付け
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200 V 以上の移動型や可搬型の電動機械器具(対地電圧150 V 以上の場合は漏電遮断装置と併用)。 |
● |
危険な場所(湿潤な所,鉄板,鉄骨上など)では100 V でも必ずアースを取り付ける。 |
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3. |
配線,移動電線など
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作業中または通行中に接触の可能性のある電源は絶縁被覆を良好な状態に保持し,通路面で使用する場合は十分な保護をする。 |
● |
電線相互の接続は十分接触できる方法をとり,湿潤した場所で使う電線,機器は防水形などの構造のものとする。 |
● |
ハンドランプや仮設の架空つり下げ電燈には,口金への接触と電球の破損による災害を防止するため,ガードを取り付ける。 |
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4. |
活線近接作業
架空電線,トロリ線,電力装置などの充電路に近接するところで工事を行ったり,移動式クレーンなどを使用する場合に,作業者の感電を防止するため,次の措置を講ずる。
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接触の危険のある充電路について移設するか,または感電防止用の囲いを設ける。 |
● |
当該電路に絶縁用防護具を装着する。 |
上記の措置がどうしても困難である場合には,看視人を置いて作業を監視させる。 |
5. |
塗装工事
塗装工事においては次の点に留意する。
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塗装材料の多くは引火性があるから,材料の置場および作業場所では火気厳禁,置場の表示,取扱上の注意周知などの措置をしておかなければならない。 |
● |
水槽内または暗きょ内などでの塗装作業をする場合には,喫煙,火気厳禁はもちろん,ガス排除のための機械換気を必要とする。 |
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