市街地建築物法施行規則

市街地建築物法施行規則 現代文へ訳します
市街地建築物法
市街地建築物法施行令
戦時特例
市街地建築物法施行規則
第1章
通則
第2章
建築物の突出部
第3章
構造設備
第1節
一般構造設備
第2節
構造強度

第1〜第4
構造強度
第5〜第7
第4章
第5章
第6章
市街地建築物法施行細則
東京都
大阪府
京都府
神奈川県
愛知県
兵庫県
第一章 通則 第一章 通則
第一條(用語の定義) 第1条
本則ニ於ケル用語ハ左ノ例ニ依ル
一 
居室トハ居住ノ用ニ供スル室ヲ謂フ
  玄關、廊下、階段室、外套室、便所、手洗所、浴室、物置、納戸、暗室ノ類ハ居室ト看做サス
居室とは居住の用に供する室をいう。玄関、廊下、階段室、コート室、便所、手洗所、浴室、物置、納戸、暗室の類は居室とみなさない。
外套室とは防寒具などの外着を置いておくようなクロークのことです。

地階トハ其ノ床面地盤面下ニ在ル階ヲ謂フ但シ其ノ床面地盤面ヲ下ルコト一尺未滿ノモノハ之ヲ第一階ト看做ス
地階とはその床面地盤面下にある階をいう。ただし、その床面地盤面を下がること1尺(30cm)未満のものは地上階、第1階とみなす。
この基準は現在の建築基準法より緩いというか異なります。現在の定義では施行令第1条2号により床面から地盤面までの高さがその階の天井高さの1/3以上のものとなっている。物置など非居室ならいざ知らず、居室的用途なら70cm以上ですので。

屋階トハ屋根裏ニ設ケタル階ヲ謂フ
屋階とは、屋根裏に設けた階をいう。小屋裏を階とする扱いです。でも考え方は一般階と同じです。
四 
床高トハ床面ヨリ其ノ直下地面迄ノ距離ヲ謂フ
床高とは床面よりその直下地面までの距離をいう。この時代は平均GLといった考えはありません。

 階高トハ其ノ階ノ床面ヨリ其ノ直上階ノ床面迄ノ高ヲ謂フ但シ最上階ニ在リテハ其ノ天井高ヲ謂フ
階高とはその階の床面よりその直上階の床面までの高さをいう。ただし最上階においてはその天井高をいう。現在の確認申請でも5面の最上階の高さ記述は不要です。これは天井高と同じために不要という扱いになっています。
六 
天井高トハ室ノ床面ヨリ天井迄ノ高ヲ謂フ
 2項 
一室ニシテ天井高異ル部分アルトキハ其ノ室ノ床面積ヲ以テ容積ヲ除シタルモノヲ謂フ
天井高とは室の床面より天井までの高さをいう。
2
1室にて天井高の異なる部分があるときは、その室の床面積をもって容積を割ったものをいう。
現在の平均天井高の求め方と同じです。

 外壁トハ建築物ノ外側ヲ構成スル壁體ヲ謂フ

外壁とは建築物の外側を構成する壁体をいう。
八 
間壁トハ建築物ノ内部ヲ區劃スル壁體ヲ謂フ

間壁とは建築物の内部を区割りする壁体をいう。

界壁トハ接續建築物ヲ區劃スル壁體ヲ謂フ
界壁とは、接続建築物を区割りする壁体をいう。この規定は長屋などが当時から多いので防火規定が設けられていました。一体の建物で区割りする必要があるのでこのような書き方がされていました。

 不燃材料トハ、煉瓦、石、人造石、「コンクリート」、石綿盤、瓦、金屬、陶磁器、硝子、「モルタル」、漆喰ノ類ヲ謂フ
不燃材料とは、レンガ、石、人造石、コンクリート、石綿板、瓦、金属、陶磁器、ガラス、モルタル、漆喰の類をいう。
現在はH12告示第1400号で定められているが、繊維混入セメント板、ケイカル板、石膏ボード、ロックウール、グラスウールなどが入っている。
石綿板はアスベスト問題で消されている。(他に認定品も認めている)
十一 
耐水材料トハ煉瓦、石、人造石、「コンクリート」、鉛、「アスファルト」、陶磁器ノ類ヲ謂フ
耐水材料とはレンガ、石、人造石、コンクリート、鉛、アスファルト、陶磁器の類をいう。
現在は施行令第1条4号で記載されているが、鉛が無く、ガラスが含まれている。
鉛板は当時、施工の容易さ、耐久性などにより屋根材などで用いられていたが、鉛中毒などが報道されてから削除されている。
十二 
石造トハ石造、人造石造及「コンクリート」造ヲ謂フ
石造とは石造、人造石造及びコンクリート造をいう。ここでは無筋コンクリートと扱います。
十三 
壁體ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ

イ 
厚一尺以上ノ煉瓦造又ハ石造
ロ 
厚四寸以上ノ鐵筋「コンクリート」造鐵骨造ノ場合ト雖壁體ノ厚ハ本號イ又ハロノ規定二依ル

壁体の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 
厚1尺(30cm)以上のレンガ造又は石造
ロ 
厚4寸(12cm)以上の鉄筋コンクリート造。鉄骨造の場合といえども壁体の厚さは本号イ又はロの規定による。
これにより、鉄骨造であっても30cm以上のレンガ、コンクリート又は別建てでRC造の12cm以上の壁がなければ耐火構造にならないことになる。
十四 
床又ハ屋根ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 
鐵筋「コンクリート」造
ロ 
鐵骨ヲ有スル鐵筋「コンクリート」造、煉瓦造又ハ石造
ハ 
煉瓦造又ハ石造
ニ 
最下階ノ床二在リテハ土間、叩、石敷ノ類
床又は屋根の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 
鉄筋コンクリート造
ロ 
鉄骨を有する鉄筋コンクリート造、レンガ造、石造
ハ 
レンガ造又は石造
ニ 
最下階の床においては土間、たたき、石敷きの類
これらによるが、中間階の床はイ、ロ又はハの規定が該当することに読み取れる。
最下階については、現在の建築基準法第2条5号「主要構造部」で除かれている。
十五 
柱ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 
煉瓦造又ハ「コンクリート」造
ロ 
鐵筋「コンクリート」造
ハ 
鐵柱ニシテ耐火的ニ有効ナル被覆ヲ爲シタルモノ
ニ 
石造ニシテ地方長官ノ承認セルモノ
柱の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 
レンガ造又はコンクリート造
ロ 
鉄筋コンクリート造
ハ 
鉄柱にして耐火的に有効な被覆をしたもの
ニ 
石造にして地方長官の承認したもの
国家などの評価でなく、地方長官が承認した「石」造ならOKとなっています。
被覆の厚さや規定はあるのでしょうか??
十六 
階段ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 
鐵筋「コンクリート」造、煉瓦造又ハ石造
ロ 
鐵骨ヲ有スル鐵筋「コンクリート」造、煉瓦造又ハ石造
ハ 
鐵造
階段の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 
鉄筋コンクリート造、レンガ造又はコンクリート造
ロ 
鉄骨を有する鉄筋コンクリート造、レンガ造、石造
ハ 
鉄造
ここで、「ハ」鉄造が認められていることはちょっとビックリです。現在では令107条にて30分耐火が必要で、(108条の3にて準耐火ではOKですが)一般的に鉄に被覆又は不燃であるコンクリートと足せばOKです。
十七 
甲種防火戸トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 
鐵製ニシテ鐵板ノ厚五厘以上ノモノ
ロ 
鐵骨「コンクリート」造又ハ鐵筋「コンクリート」造ニシテ厚一寸二分以上ノモノ
ハ 
厚五寸以上ノ土藏扉

2
地方長官ハ防火戸ノ構造ノ種類ニ依リ適當ト認ムルモノニ對シ前各號ノ規定二拘ラス別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
甲種防火戸とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 
鉄製にして鉄板の厚さ5厘(1.5mm)以上のもの
ロ 
鉄骨コンクリート造又は鉄筋コンクリート造にして厚さ1寸2分(36mm)以上のもの
ハ 
厚5寸(15cm)以上の土蔵扉

2項 
地方長官は防火戸の構造の種類により適当と認めるものに対し前各号の規定にかかわらず別途規定を設けることが出来る
現在の建築基準法ではH12告示第1369号により「特定防火設備」として具体的に定められているが、ロの36mmは35mmである。
平成12年改正前は令110条にて甲種防火戸として定められているものがそのまま告示になっており、基本的には市街地建築物法より変わっていない。(現在でも甲種防火戸の呼び名で技術者間の会話では通用している)
ちなみに現在の告示では若干細かく且つ換気用の開口規定などの緩和規定もある。

十八 
乙種防火戸トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 
鐵製ニシテ鐵板ノ厚五厘未滿ノモノ
ロ 
鐵骨「コンクリート」造又ハ鐵筋「コンクリート」造ニシテ厚一寸二分未滿ノモノ
ハ 
木造又ハ鐵造ニシテ屋外ニ面スル部分ヲ厚一寸以上ノ「モルタル」、漆喰又ハ適當ナル厚ノ石綿盤ノ類ヲ以テ被覆シタルモノ
乙種防火戸とは、次の各号の1に該当するものをいう。
イ 
鉄製にして鉄板の厚さ5厘(1.5mm)未満のもの
ロ 
鉄骨コンクリート造又は鉄筋コンクリート造にして厚さ1寸2分(36mm)未満のもの
ハ 
木造又は鉄造にして屋外に面する部分を厚1寸(30mm)以上のモルタル、しっくい又は適当な厚さの石綿板の類をもって被覆したもの
現在の呼び名は防火設備だが、これも乙種防火戸として通用する。
ちなみに現在の告示(H12告示第1360号)では鉄板厚0.8mm以上1.5mm未満、又、網入りガラスで造られたものなどがある。「ハ」の規定もそのまま通用するのだが、現在では石綿板は使用できない。その代わり0.9mm以上の石膏ボードが使用可。
3 
地方長官ハ防火戸ノ構造ノ種類二依リ適當ト認ムルモノニ對シ前各號ノ規定二拘ラス別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
3項 
地方長官は防火戸の構造の種類により適当と認めるものに対し前各号の規定にかかわらず別途規定を設けることが出来る
十九 
建築物ノ大修繕トハ壁體、柱、小屋若ハ基礎ノ過半ノ修繕又ハ之二準スル構造上主要ナル部分ノ修繕ヲ謂フ

建築物の大修繕とは壁体、柱、小屋もしくは基礎の過半の修繕又はこれに準ずる構造上主要な部分の修繕をいう。
現在の法2条14号の規定による大規模の修繕と似ているが違う取り扱いである。
現法では法2条5号による主要構造部の過半の修繕が該当するが、この中に「基礎」は含まれていない。
基礎は「構造上主要な部分」で定義があるが、一般に防火規定を意味する「主要構造部」ではない。当時の規定は構造と防火の意味分けが不明瞭であったようです。
二十 
大變更トハ壁體、柱、床、小屋、基礎等構造上主要ナル部分ノ變更ヲ謂フ

大変更とは、壁体、柱、小屋もしくは基礎等構造上主要な部分の変更をいう。
この大変更というのは、現在の基準法には無いものである。これは構造上主要な部分とあるので明らかに構造の安全上の配慮である。
又、過半などと書いていないので、例え少しでも変更するなら該当するようです。
第二條 (測量における取り扱い) 第2条
本則ノ適用ニ關シ土地又ハ建築物ニ關スル測算方法、呼稱等ニ付疑義ヲ生シタルトキハ地方長官之ヲ決定ス 本則の適用に関し土地又は建築物に関する測算方法、呼び称等について疑義が生じたときは地方長官はこれを決定する。
第三條 (建物の維持)
本則ニ規定セル建築物ノ採光、換氣、防火、避難、C潔、強度ニ關スル構造設備ハ常ニ有数ニ保持スヘシ
第3条
本則に規定する建築物の採光、換気、防火、避難、清潔、強度に関する構造設備は常に維持管理すること。清潔って規定があったんですね。



第二章  建築物ノ突出部

第四條 (建築線を突出する場合の特例)
 市街地建築物法第九條但書ノ建築物ノ前面突出部ハ左ノ範圍内ニ於テ建築線ヨリ突出セシムルトヲ得但シ特ニ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合ノ外前面建築線間ノ距離ノ二十分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
第4条
市街地建築物法第9条但し書きの建築物の前面突出部は以下の範囲内において建築線より突出してもかまわない。ただし、地方長官の許可を特別に受けた場合の外前面建築線間の距離の1/20を超過してはならない。建築線(敷地境界線)の延長の距離を1/20以上超えてはならないという意味です。
市街地建築物法第9条とは、「建築物は建築線より突出して建築することは出来ない。但し建築物が地盤面下にある場合はこの限りでない。」


一 
蛇腹、軒、小塔、出窓、標旗、標燈、招牌其ノ他之二類スルモノハ路面上十尺以上ニ在ル場合ニ限リ三尺迄

蛇腹、軒、小塔、出窓、標旗、標燈、招牌その他これらに類するものは路面より10尺(3m)以上にある場合に限り3尺(90cm)まで突出を認める。
二 
出入口ノ階段、凹庭ノ手摺地覆、腰石、根石其ノ他之ニ類スルモノハ一尺迄

出入り口の階段、凹庭の手摺地覆、腰石、根石その他これらに類するものは1尺(30cm)まで突出を認める。
現在の建築基準法では道路側の境界線を越えることは認められていません。(道路後退線内も)が、市街地建築物法ではある程度までは認められていたようです。(原則禁止ですが)
ただ、階段や腰石など、せいぜい10〜20cm程度の用途に限定されていたようです。
しかし、建築線延長の1/20だと、接道10mだと50cm程度ですから、大して影響なかったのかもしれませんね。
第五條 (建築線の越境範囲)
 市街地建築物法第九條但書ノ建築物ノ基礎ハ地方長官特ニ指定スル場合ヲ除クノ外道路幅ノ境界線ヲ超エサル範圍内ニ於テ建築線ヨリ突出セシムルコトヲ得
第5条
市街地建築物法第9条但し書きの建築物の基礎は地方長官が特に指定する場合を除き、道路幅の境界線を越えない範囲内において建築線より突出することを認める。
建築線は必ずしも道路位置と同じではなく、水路や泥上げスペースなど公的なものがある場合の特例だと解釈できる。これにより第4條は道路へ越境は不可だが、道路以外の公共用地なら程度によるが可ということがわかる。

第六條 (建築物の高さ)
装飾塔、物見塔、屋窓、昇降機塔、水槽等建築物ノ屋上突出部ニ付テハ市街地建築物法施行令第四條乃至第八條ノ高ノ最高限ノ五分ノ一迄ハ建築物ノ高ニ之ヲ算入セス但シ其ノ算入セサル部分ノ最大幅ハ建築物ノ高ノ五分ノ一ヲ、其ノ最大面積ノ合計ハ建築面積ノ十分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
第6条
装飾塔、物見塔、屋窓(トップライト)、昇降機塔、水槽等建築物の屋上突出部については市街地建築物法施行令第4条から第8条の高さの最高限度の1/5までは建築物の高さにこれを算入されない。
ただし、その算入されない部分の最大幅は建築物の高さの1/5を、その最大面積の合計は建築面積の1/10を超えてはならない。
現在の建築基準法では令2条6号ロにより規定されているが、建築面積の1/8以内、高さ12m以内(地域により異なるが)である。

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